ジェームスグロース

James Grose

James Grose(ジェームスグロース)は、1876年創業の英国の老舗レザーウェアブランドです。皮革職人としての熟練した技術と情熱をもった創業者の信念を受け継ぎ、2016年にブランドが復活しました。現在もロンドン市内唯一と言われるライダース専門ファクトリーにて、一つずつハンドメイドで製造しています。デザインとして完成されたアーカイブをベースに時代を超えて愛されるレザーウェアを展開しています。

HISTORY

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この世の中にまだバイクが存在しなかった時代

創業者ジョセフ G. グロース氏は、イギリス・ノーザンプトンのセントジェームセントジェームスアンブッシュにあるアンブッシュ・ストリートで働く皮革職人でした。

※セントジェームスは、イングランドのノーサンプトンの町の中心部より西にある地区のこと。この地域は 19 世紀半ばから後半にかけて、特に靴製造業とエンジニアリング産業の拡大とともに発展し、1882 年 6 月にはロンドンからの鉄道も延伸されました。

発明家でありビジネスマンでもあった彼は、自転車レースに熱中し、自身も全国記録を更新するほどの実力者でした。1876年に彼はセントジェームスに小さな店を構え、自転車の組み立てと修理を行う事業を始めました。

1897年、グロース氏は「特許チェーンケース」を発明しました。パテントレザー製のこのケースは、自転車の駆動機構を覆うパーツでした。女性のスカートなど衣服がチェーンに引っかかるのを防ぐ役割を持ちますが、この部品の販売が大成功を収め、後に、初期の自動車の油まみれのチェーンドライブのカバーとして応用されることにもなりました。また、フランスのモーターサイクル産業とのビジネスを通じて、彼はベンツエンジンを使用した、イギリスで最初の自動車の 1 つを製造したことでも知られています。


19世紀末から1920年代にかけて、彼はオートバイの販売と修理、車体製造、商用車、路線バスやタクシーなどの乗合自動車の製造・運営へとビジネスを拡大し続けました。
ジェームスグロースが生産していたバイクで 有名なものとしてグロースシュプール(Grose-Spur)があります。非常にシンプルな構造で、材料コストと機械コストをミニマルに抑えられたことが特徴のこのバイクは1916年に販売が開始され、第一次世界大戦の最中でも、一般市民でもオートバイを自家用として購入することが出来る程度に安価で、イギリスにてバイクが普及するきっかけとなった車種の一つでした。


THE HOUSE OF ALL SPORT

第一次世界大戦を経てバイクの需要が高まるにつれて会社は大きく成長し、ロンドンのユーストンロードに総合モーターサイクルアクセサリーショップをオープンします。自社ブランドとして「Jagrose」のアイテムを販売して人気を博しました。James Grose社がモーターサイクルスーツを開発したのは1930年頃で、それまでバイク文化を醸成してきた同社が手掛けた製品はすすぐに人々へ受け入れられました。

※ユーストンロード:メリルボーン ロードからキングス クロスまで続くロンドン中心部の道路

創業者ジョセフが1939年にこの世を去ってからは3人の子供が会社を継いで、経営を続けました。1950年代には「THE HOUSE OF ALL SPORT」として自動車関連の商品に加え、英国を代表するスポーツであるクリケットを始めとするスポーツ用品全般、アウトドア用品も取り揃えるデパートメント・ストアとして親しまれました。
1960年代に入る直前に2代目の子供たちはすべてこの世を去り、3代目が継ぐことになります。
ロンドンの中心地でランドマークとして長らく営業していたJames Groseは徐々に業績が不信なり、1960年代以降、英国全土を覆った長期的な経済停滞の波には抗えず、1971年に一度倒産。ブランドとしても幕を下ろします。

復活

それから約40年、工場に保管されていたJames Groseのアーカイブ品が見つかったことがきっかけとなり、流行よりもむしろ専門的で実用的なデザインであるアーカイブ品には、普遍的な魅力があり、時代に左右されない1着を世の中に届けるべく、2016年に復活を遂げました。
本格的な地厚なレザーを使い、1点1点イーストロンドンのファクトリーにて手作業で作られています。1mm以上の地厚なレザーを縫い合わせてジャケットを製作するには、高い技術力が求められます。本格的なライダースジャケットを生産できるファクトリーは、英国内でも少なくなってきています。