Cape HEIGHTS PEOPLE VOL.10 RYUTA KIJIMA(料理研究家)

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ケープハイツがテーマに掲げる“熱量”。
それは、厳しい自然環境はもちろん、先行き不透明な都市生活のなかにあっても我々をその先へ導く羅針盤になるはずだ。
そんな熱量を持って日々過ごし、自分らしく生きる人々こそが
“ケープハイツピープル”。
連載10回目は、料理研究家のきじまりゅうたさんを訪ねた。
一度は遮られながらも、抑えきれなかった“好き”への情熱。
よく笑い、よく喋り、よく作り、食べる。きじまりゅうたさんは、いつも楽しそうだ。料理を生業として約20年。同じく料理研究家の母、杵島直美さんのアシスタントを経て独立してからは15年。毎日何か面白いことを考え、実行のチャンスを窺っている。
「仕事はとても楽しいです。それこそ15年間ずっと。朝からの撮影で今日は眠い……みたいな日は当然ありますが、この仕事がイヤだと思ったことは本当に一度もない。新しいレシピや提案がバチッとハマった時とか、僕の料理を実際に作った人が喜んでくれた時なんて、もう最高! 2年ほど前からYouTubeを始めたんですが、面倒くさいんだろうなと思っていた映像編集にも意外と沼っちゃって(笑)」
生まれ育った都内の一軒家を現在の職場とするきじまさん。そこは、母、そして祖母がプロとしてレシピを紡いだ場所でもある。つまり、料理研究家一家の三代目。近所の八百屋さんとも昔からの顔馴染みで、まるで親戚のように会話が弾む。
「子供の頃から家のお使いで来ていますけど、こういう個人で長く続いているお店ってだいぶ減っちゃいましたね。悲しいけれど、それも時代の流れなんでしょう。僕ら料理研究家も、時代の流れが移り変わるからこそ新しい発見があるし、面白い。昔から変わらずいいものは、当然リスペクトしながらですけどね」
今ではさほど聞こえなくなったが、今年で42歳を迎えるきじまさんの幼少期は“男子厨房に入らず”が当たり前だった時代。それでもなぜ、料理研究家の道を選んだのだろうか。
「母や祖母の仕事をそばで見ていて、すごく楽しそうだなって。そういう意味では恵まれた環境だったと思います。でも実は一度、『料理研究家にはなるな』と祖母から言われたんです。『男がやる仕事じゃないぞ』って。今思えば、そんなに甘いもんじゃないっていうメッセージでもあったんだと思います。とにかく当時の僕はその言葉に従い、別の仕事を見つけました。大学に通いながらアパレルブランドのお手伝いをして、卒業後もディレクターとして働いていたんです。まあ、ディレクターといっても、営業から企画まで全部やってました」
「でもね、料理研究家への道は諦めきれなかった。だから祖母には内緒で、こっそり母の手伝いをしたこともあったんです。で、そんな気持ちを後押ししてくれたのが、祖母の葬式で親戚から聞いた話。口では『やめろ』って言いながらも婆さん、本当は僕に料理の仕事をしてほしかったらしくて。素直じゃないですよね(笑)。それから母の元で修行して、今に至ります。ただ、アパレルの仕事も経験できてよかった。料理と同じく好きなことだったし、新しいネタを考えたり与えられたお題を解決するのって、今の仕事とも通じるんです」
ちょうどその頃は、男性の料理やブログカルチャーが盛んになり始めた頃。自ら作った料理をホームページにアップして、交流を楽しむ動きが起きつつあった。
「男性向けの料理雑誌も発刊されたりして。潮目が変わったなと感じましたし、家庭料理の形が変わったとも思いました。これはチャンスだし、逃すわけにはいかないって。そこからはもう、ずっと前のめりですね」
日々発見。やりたいことは、まだまだたくさん。
料理が得意と公言する男性は、今でこそ珍しくない。と同時に、料理が苦手な男性が多いのも事実。それはきじまさんも重々承知のうえで、料理ができることのメリットについてこう語る。
「結局、“できない”より“できる”ほうがいいでしょ? ってことだと思うんです。自分が食べたいものを自分で作れるのは生活上プラスだし、作り方がわかればスーパーに行くだけでも違った景色が見えてくる。ほかにも、食材を知れば季節の移り変わりがわかるようになるとか、考え方はいろいろあると思います。でも一番大きいのは、生きるうえで単純に楽しみが増えること。最初は難しいものじゃなくていい。卵かけご飯だって、ただウインナーを焼くのだって、ちゃんとひとつの料理ですから」
「そうだ。僕が最近考えた“新じゃがのポテサラ”は、フライパンひとつで手軽に作れるから普段は料理をしない人にも試してみてほしいな。じゃがいもを蒸し焼きにして、マヨネーズを入れて、フライパンの空いたスペースで目玉焼きも焼いちゃう。あとは混ぜ合わせるだけ。簡単なのにウマいっすよ!」
日々新たな目線で、新しい楽しさを見つける。仕事を続ける。今後についても、「ラジオ番組もやりたいし、海外に日本の家庭料理を伝えるイベントもやりたい。あとは最近キャンプにもハマっているから、キャンプ飯に特化した何かも始めたい」と堰を切ったようにやりたいことが湧き出てくる。
「ファッション業界とのコラボレーションもいいですね。ケープハイツさん、キャンプで格好良く使える男性用のエプロンとか作りませんか? 今回着させてもらったこのシャツもすごく調子いいし、きっと面白いものができるんじゃないかと!」
この日はカジュアルな服装に合うケープハイツの新作、表面をピーチ加工で微起毛させたナイロンポリエステル製シャツを着用。軽い生地感、ゆとりのあるシルエットは動きやすく、調理中の動きも邪魔しない。
「ゆったりした身幅もそうですが、ラグランの肩周りがラクで気に入りました。大きいポケットが付いて、ペンやメモ帳を入れておくのにも便利。アウトドアテイストはもちろん、広いアームや胸ポケットの切り替えなど少しストリート的な要素もあって、僕的にすごく好きなバランスです。半袖ってところも料理をするうえではありがたい。長袖だと調理中は捲らなきゃいけませんから。あとは火が服に移らないよう注意するだけですね(笑)」
しかも今作は、生地裏側のポケットに本体を収納できるパッカブル仕様。きじまさんの最近の趣味だというキャンプでも活躍必至だ。
「確かに! キャンプとか野外でもそうですけど、例えば冷房の効きすぎた夏のスタジオなんかでも重宝しますよね。バッグに入れて持ち運んで、肌寒い時にさっと羽織れる。さすが、よく考えられている服だな〜。僕もコラボエプロンの原案、ちゃんと考えますね(笑)!」
きじまりゅうた
東京都出身。1981年生まれ。祖母の村上昭子、母の杵島直美はともに料理研究家で、写真家の杵島隆を祖父に持つ。母のアシスタントを4年間務めたのち、2008年に独立。現在はNHK『きょうの料理』におかず青年隊として出演するほか、書籍や雑誌などでも幅広く活躍する。YouTubeチャンネル「きじまごはん」も好評。主な著書に「弁当男子」「りゅうたのフライパンひとつで男めし」「材料2つだけ! きじま流極旨レシピ」など。
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“ケープハイツピープル”。連載10回目は、料理研究家のきじまりゅうたさんを訪ねた。
2023.04.14