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英国最古級のテキスタイルブランド「ジョシュア・エリス」の マフラー&ストールの魅力とは? PERSON-Hirohisa Yamaguch Vol.1 ARTICLE Interview 英国最古級のテキスタイルブランド「ジョシュア・エリス」の マフラー&ストールの魅力とは? PERSON-Hirohisa Yamaguch Vol.1 ARTICLE Interview

  • 英国発のラグジュアリーな
    マフラー&ストールとして
    近年人気上昇中のジョシュア・エリス。
    なぜ今このブランドが注目されるのか?
    秘密を紐解くため、ブランドの
    セールスディレクターを務める
    山口浩久さんにインタビューを
    行いました。
    今回はその前編。
    ジョシュア・エリスの歴史や
    生産背景について伺います。

    TEXT : IWAO YOSHIDA

  • ジョシュア・エリス / セールスディレクター 山口 浩久さん

    ジョシュア・エリス / セールスディレクター

    山口 浩久さん

History of Joshua Ellis History of Joshua Ellis

  • History of Joshua Ellis

    History of Joshua Ellis

  • ジョシュア・エリスは英国最古級の生地メーカーと聞きましたが。

    山口/ジョシュア・エリスが英国北部のヨークシャーで創業したのは1767年。イギリスには老舗と呼ばれる生地メーカーが多く存在しますが、同社ほど古くまで歴史を遡れるところは希少でしょう。もっとも元々は洋服屋で、産業革命とともにヨークシャーのウール生地生産が盛んになったことで、ジョシュア・エリスの創業家も生地作りに転換したようです。その後、周辺の工場を束ねていき、18世紀後半にはヨークシャーを代表する生地メーカーへと成長を遂げています。

    最初はどのような生地を作っていたのでしょうか?

    山口/昔から今に至るまで、英国らしい紡毛(ぼうもう)生地が主体です。丈夫で防寒性に優れるコートやジャケット用の服地のほか、昔は絨毯や椅子などに使われる資材用生地も多く手がけていたようです。そのうち服地に特化するようになり、やがてカシミア、キャメル、ビキューナなどウール以外の高級原毛も扱うようになっていきました。そうした付加価値を高めた生地はロンドンのテーラーにも喜ばれ、英国の上流階級にも寵愛されたようです。

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  • 日本ではマフラーやストールが有名ですが、現在もジョシュア・エリスの服地は欧米の多くのテーラーや一流メゾンが使用しているそうですね。それはどのようなところが評価されているのでしょう。

    山口/基本的なモノ作りがしっかりしているからだと思います。1980年代以降、軽くて柔らか、そしてツヤのあるイタリアの服地がもてはやされてきましたが、長く着用するコートやジャケットには、やっぱり英国の紡毛生地を使ったほうがいいという考えが欧米には厳然とあるんでしょう。とくに最近のトップデザイナーには、昔ながらの英国服地に対して憧れの強い人が多いように感じています。ジョシュア・エリスはその中でもより本格的な生地作りを行うファクトリーとして知られ、またカシミアなどの高級原毛も得意とするため、重宝されているんだと思います。

    それはメンズに限った話ですか?

    山口/確かに昔はメンズ用の服地が多かったのですが、近年はレディスもとても伸びています。ここ10年で女性のファッションがぐっとマスキュリンな方向に傾いたこともあり、うちのようなしっかりした生地感の服地が見直されているんです。また最近のインターナショナルブランドはメンズとレディスのクリエィティブディレクターが一緒というケースも多く、両者の選ぶテキスタイルが接近していることも、ジョシュア・エリスにとっては好材料となっています。

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  • そういう服地作りの背景は、カシミアマフラーやストールを手がける上でもアドバンテージになっているんでしょうか?

    山口/それはもちろん大きな強みです。マフラー専業メーカーではなく、服地のスペシャリストのため、生地を作る上でのいろんなテクニックを備えていますから。

    具体的にジョシュア・エリスのマフラー&ストールの良さを教えてください。

    山口/何よりもまずこの生地の風合いですね。英国らしくしっかり目が詰まっていながら、表面はふんわりと柔らかく、カシミアのぬめるようなタッチも存分に味わえます。

    柄も美しいですね。英国の伝統を感じさせるチェック柄が豊富に揃い、しかもその格子の一つひとつが非常に鮮明!

    山口/ひとつの理由としては生地の“縮絨(しゅくじゅう)”に長けているからです。基本的にこういう防寒用の生地は、織り上げた後に生地を縮めて厚みを出すんです。その際に効率を優先して生地の横方向だけを縮めるところも多いのですが、うちはじっくり時間をかけてちゃんと縦方向も縮めているからチェックのカタチが崩れないんです。しかも薬品の類を一切使わずに。これには長年のノウハウが必要ですし、とても根気のいる工程です。

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  • なるほど。生地の縦横が同比率で縮絨されているわけですね。確かにそれはすごい技術です。

    山口/さらにその後の“起毛”工程についても高度なテクニックを有しています。起毛とは生地表面のヨコ糸をアザミなどで掻いて柔らかなタッチに仕上げること。うちの生地はしっかり縮絨しているため、深く生地を掻くことができるんです。つまり毛足が長いより高級感あるタッチに仕上げられるんですが、普通はここまでヨコ糸を深く起毛させるとタテ糸が隠れてチェック柄がぼんやりしてしまい、遠目にボーター柄のように見えがち。なのにジュシュア・エリスは職人の巧みなハンドリングで、くっきり美しいチェック柄をキープ。私は長年英国生地を見続けてきましたが、このあたりの技術には本当に感服します。

    〈Vol.2へ続く〉

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TO BE CONTINUED ※次回更新11/2頃予定 TO BE CONTINUED ※次回更新11/2頃予定
  • Hirohisa Yamaguchi

  • Hirohisa Yamaguchi Hirohisa Yamaguchi

    愛知県出身。大学卒業後、大手繊維専門商社に8年勤務。その後スコットランドの有名テキスタイルメーカーに入社し、日本でのブランドビジネスを大きく躍進させる。同社を15年に退社後、16年AWからのジョシュア・エリスの日本ローンチに参画。現在はセールスディレクターという立場から、同ブランドのマフラー&ストールのシーズンコレクションの企画を行う。